人事評価における【定性評価】と【定量評価】について

人事コンサルティングサービスを提供していると、つくづく思うことがあります。
「人事評価(考課)に、最適解はあるが、最善解はない・・・。」と。
人事コンサルタントが、このようなことを言うと身も蓋もないと思われるかもしれませんが、やればやる程そのように思います。
人事評価は結局、「基準」を作っていくことだと理解しています。その基準の前提を深掘りしていくと、最終的には「マネジメントの意思」に行きつきます。
ようは、組織のトップの意思次第ということになります。
そうだとしても、組織のトップがすべての構成員の評価を実施することはできません。なので、現場を知る管理者(各機能の責任者)に、評価権限を与えて評価を実施していきます。
ここで問題となるのが、各管理者が、【マネジメントの意思】という基準でどう評価するのかということです。
その基準作りをするのが、人事評価制度です。そして、この人事評価制度を構築するのはとても骨の折れる作業になります。
考えなければならない要素が多数存在するからです。
評価項目と評価基準、定性か定量か、ウェイトの設定、絶対評価か相対評価か、集計方法のロジック設定、バラツキの抑制等々です。
考えなければならない要素は多数ありますが、その中で最初に決めなければならないのは、【定量評価と定性評価】の選択及びバランスだと考えてます。

【定量評価と定性評価】の選択とバランスは、業種業態・規模の他、風土や最終的にはマネジメントの意思が重要となりますが、人事コンサルティングを実施してきた視点で【定量評価と定性評価】について語ってみようと思います。

<目 次>
1.定性評価について
2.定量評価について
3.定性評価と定量評価との調和について

1.定性評価について

定性評価は、結局、文章(テキスト)によって実施する評価ということです。

定性評価のメリットとしては、
〇全人的な評価が可能:スキルだけでなく、態度や行動も評価対象となること。
〇成長を促すフィードバック:成長と改善を促す質の高いフィードバックの提供が可能となること等となり、

一方デメリットとしては、
〇主観性:評価者の価値観が強く反映されやすいこと。
〇一貫性:評価者による解釈の違いが評価のブレを生じさせること等ということになると思います。

文章による評価には、どうしても評価する人の「価値観」や「解釈」が入ります。それはメリットでもあり、デメリットにもなります。価値観はまだしも、「解釈論」にはまっていくと不毛な議論になりがちになります。価値観は評価者の中にありますので、評価を付けることは可能ですが、解釈は価値観が外側(他人)となるからです。
例えば、「この評価項目に込めた社長の想いはどういうものか?」とか「周りの評価者はどう考えているのか?」というようなものです。

この不毛な議論を根本的に解決することには限界があろうかと思いますが、共栄経営センターでは、価値観や解釈を評価者及び経営陣でディスカッションする評価プロセスを組み込むことをお勧めしています。

2.定量評価について

定量評価は、文字通り数字による評価です。

定量評価のメリットとしては、
〇客観性: 数値に基づくため、個人の主観が介入しにくい
〇比較が容易: 数値データを用いることで、従業員間や期間をまたいでの比較が可能等
を上げることができますが、

デメリットしては、
〇数値化できない要素の見落とし: コミュニケーションスキルやチームワークなど、数値で表しにくい要素が評価から漏れがち
〇過度な競争の促進: 数値目標のみに焦点を当てると、協力よりも競争を促してしまう可能性
を上げることができます。

営利企業の定量評価の最適解は、すべての数値を「売上・利益」に結びつけることであると思いますが、結局これがなかなか困難であることも事実です。

まず、数値は客観的ですが、数値の選択はあくまでも人間が実施しています。ということは、数値を選択している時点で、人間の恣意性が入っているということです。将来ビックデータを活用したAIが「売上・利益」への相関関係を自動生成していくとで、あらゆるマネジメント活動を数値化できる世界ができれば別ですが、まだそのような世界は訪れていません。

次に、設定した数値自体の問題です。(AIが汎用化されれば別ですが)目標値(あるべき数値)は、現行は人間が設定しています。それが悪いといっているのではなく、その数値自体に、行動者(被評価者)がコミットしていないと何の意味もなくなってしまいます。
例えば、被評価者がその数値に対してコントロールができないとか、とうてい達成できない目標値等です。

この問題も完全に解決することは不可能であると思いますが、最終目標(KGI)に対して行動目標(KPI)の相関関係を検証することが、定量評価には必須であると私達は考えています。

3.定性評価と定量評価との調和について

定性評価と定量評価を考えた場合、選択肢は3つです。
〇定量評価のみ
〇定性評価のみ
〇定量評価と定性評価の組み合わせ
どれが正解で、どれが間違っているということではなく、〇定量評価のみ及び〇定性評価のみ の場合は、自社にとってそれぞれのメリットがデメリットを圧倒的に上回っている場合の施策であるように思います。それは、結構困難な道であろうかと思います。ほとんどの場合、〇定量評価と定性評価の組み合わせ を選択する場合が多い。組織が人間の集まりであり、かつ仕事が複雑化している昨今において、一義的な選択はハレーションを起こす可能性があるからです。

特に、労働法制の厳しい日本においては、一義的な評価がダメでも自由に組織離脱を図ることが難しいことも一因です。

ということで、定量評価と定性評価の組み合わせから、経営の意思は、そのウェイトの相違で表現するというのが、現状における最適解であるように考えます。
*もちろん、場合によっては、定量及び定性評価のみの提案をすることもあります。それは現状と経営の意思によります。

共栄経営センターの人事評価制度のご支援は、フレームワークを提示しつつ、価値観の教授ではなく、あくまでも現状把握と将来への展望から最適解をご提案することをコンセプトとしています。

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