中小企業に最適な等級制度で、運用できる人事制度を作る

人事制度は、3つのパーツから成り立っています。
等級制度、評価制度と処遇制度です。

それぞれのパーツの定義は色々あると思いますが、簡単・簡潔にいえば、
等級制度は、責任と権限や役割の重要性によってランクを付けること
評価制度は、そのランクに応じて仕事を評価すること
処遇制度は、評価に応じて、賃金・賞与に反映すること。
ということになります。

どのパーツも人事制度にとって、欠けてはならない要素ですが、人事制度を構築する上で、一番重要なパーツはなんですかと問われれば、「等級制度です。」とお答えします。

なぜなら、等級制度は人事制度の出発点であり、土台になります。評価制度や処遇制度が重要ではないと言っているのではなく、評価制度や処遇制度は、等級制度があることが前提という意味です。

ただ、現実はこの等級制度の重要性があまり認識されていないようにも思います。
本記事では、中小企業の等級制度の問題点と解決策について、ご提案していきたいと思います。

<目 次>
1.中小業企業の等級制度の問題点
2.中小企業に最適な等級制度
2-1.100人未満の企業なら6等級までで充分
2-2.職能要件等の仕事基準と役割等級
3.役割等級制度を活用して運用できる人事制度を作る
3-1.運用するには6等級でも多い
3-2.等級と役職との関係
4.まとめ ~簡潔な等級制度で運用できる人事制度を作る

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1.中小企業の等級制度の問題点

等級制度は、とても重要な人事制度のパーツだと認識したうえで、実際の中小企業の人事制度を見てみると、結構ないがしろにされている現状があるように感じます。

よくある例として、
100人未満の企業でるのに、10以上の等級があるような会社です。

100人未満の企業に、責任と権限、そして役割を10以上も細分化する必要性があるとはどうしても考えられません。
実際にそのような会社の等級制度を見てみても、10等級と9等級の役割の違いがわかりません。現場を見てみても、10等級の人と9等級の人の仕事内容、さらには責任と権限にほぼ違いがないのが現状です。

このように、等級制度が多段階になっていく理由については、いくつかあると思いますが、一番典型的な例として、処遇面の不具合を調整するために等級制度を弄っているからというのがあります。

例えば、AさんとBさんが同等級にいて技能・知識も同程度だけれども、採用年度が違うために給与に差がある場合です。
この場合、AさんとBさんを同等級においておくことは、辻褄が合わなくなってくるので、それでは等級を増やそうというパターンです。

非常に極端な例ですが、このパターンにはまると、従業員数が増えていくにつれ、等級が際限なく増えていくことになります。本来は、責任と権限、役割によって区分している等級制度であるはずが、いつの間にか等級差の意味がなくなっていきます。

これでは、まさに本末転倒で、本来等級制度は、責任と権限を明確にして役割を定義することで、組織的にはガバンスを整えること、従業員的には役割認識とモチベートになるべきものであると考えます。

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2.中小企業に最適な等級制度

2-1:100人未満の会社なら5等級までで充分

それでは、中小企業にとって最適な等級数はどのくらいなのかということですが、(実際は様々なパターンがありますが・・・)「5等級がわかりやすくて最適で、いったとしても6等級までで充分」とご提案しています。

中小企業の従業員の役割が、そんなに多段階にあるとは考えられませんし、権限・責任を細分化しても、混乱をきたすだけだと思います。使い古されてフレーズを承知で言いますが、中小企業の強みは「柔軟性」にあると考えます(弊社も含めて)ので、細かく細分化した等級制度では硬直化が免れません。
よって、まずは大きな枠組みでの等級制度、つまりは5等級あるいは6等級での等級制度の設計が最適であると考えます。現実的に、弊社のクライアントではうまくいっています。

大きな等級概念としては、上図のようになります。あとは、要件を自社の実態に沿って肉付けをしていくだけです。

 

2-2:職能要件書等の仕事基準と役割基準

人事の教科書的にいえば、仕事の基準書を作成することは王道です。
仕事の基準書は、職能要件書や業務記述書、コンピテンシーなど考え方によって様々な定義がありますが、どのような定義であれ、基本は「現在の仕事を棚卸して、記述していこう。」ということです。

この仕事の棚卸を否定するつもりはありませんし、弊社も様々な仕事記述書を作成してきました。
ただ一点いえることは、仕事を記述することは、書き換えることが前提となります。書き換えないということは、「去年の仕事を今年も続ける」ということになります。
中小企業は、変化に対して迅速に対応しなければならないのに、人事制度は変化を許容しない。これでは、またまた本末転倒になってしまいます。

コンピテンシーを本気で実施することは別にして、役に立たないとはいいませんが、なんとなく作らなければいけないから作るというのは、やめておいた方がいいと思います。

そこで、お勧めするのが、前章で記述した「役割記述書」です。
これは、職群・職種に関係なく、等級ごとの役割を明確にしたものです。
見てお分かりのとおり、役割を等級ごとに大枠でくくっています。
この大枠の定義で等級を設定することで、変化に対して柔軟な対応ができます。

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3.役割等級制度を活用して運用できる人事制度を作る

3-1:運用するには6等級でも多い

等級制度は、5・6等級が最適と書きましたが、運用面から考えるとこれでも多いと考えます。結論から言えば、2区分でいい。

理由を挙げてみます。

営業職や技術職などの職種が5種類あるとします。従来の考え方だと、この5職種に対して、各等級が張り付きます。
等級が5等級あったとします。横軸に職種が5つあり、それぞれの職種に対して等級が5つある。
ということは、それに応じて、評価表を作っていかなければならないということになります。営業職も新人とベテランでは、求められる期待が違います。

結果として、この会社の人事評価表は、5職種×5等級=25種類の人事評価表ができることになります。

25種類の人事評価表を作成することを想像してみてください。
さらに、人事評価表には、様々な評価要素があります。

例えば、結果評価・業務評価・態度評価・目標管理の4つの評価要素があるとすると、
25種類×4評価要素=100評価要素となります。
さらに、各評価要素には評価項目があります。考えるだけで、嫌になります。

よって、運用面から人事制度を見た場合は、5等級でも多い。2区分での運用をお勧めしています。

2区分というのは、例えば、
1・2・3等級=一般
4・5等級=管理

という分け方です。

少し荒っぽく聞こえるかもしれませんが、人事制度のスタートアップはこのぐらいの区分から始めるのがいいと思います。
そして、人事制度の運用に慣れてきた段階で、徐々に区分を細かくしていくという方法をとった方が、運用で挫折することが少なくなります。

 

3-2:等級と役職との関係

先ほど提示した等級表の図を見て、あれ?と思われた方がいるかもしれません。
もう一度図を提示しています。

対応役職というところです。
等級と役職の関係性はとても悩むところです。悩むというのは、

(1):等級=役職なのか
(2):等級≒役職なのかです。

(1)の考え方は、この表でいえば、4等級の人は必ず課長になるということです。
(2)の考え方は、4等級にいる人の中から課長を選ぶというやり方です。

どちらもメリット・デメリットがありますが、お勧めするのは(2)の等級≒役職の方法です。

理由は2つ
(1)の方法だと、人件費の抑制はできると思いますが、役職がつかなければ処遇もあがらないという事態になってしまう。
(2)の方法だと、役職についていない人でも、処遇面を厚くすることができます。かつ役職者に役職手当を付けることで、非役職者と処遇上の差をつけることもできます。

職群やキャリアルートなどを設定した場合、実際の運営はこれよりも少し複雑になりますが、基礎となる考え方は同じです。

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4.まとめ ~簡潔な等級制度で運用できる人事制度を作る

等級制度は人事制度の基礎になる部分です。評価制度や処遇制度は、基礎たる等級制度の上にできる家と考えてもいいと思います。
基礎が揺れると家もゆれます。家を揺らさないために柱を太くしても、地盤沈下したら家はひとたまりもありません。

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本記事が皆様の人事制度構築に参考になれば幸いです。

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