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経営者の最大の仕事は、後継者の決定である ~先代から受け取ったバトンをどう繋げるか~

 

「苦渋の決断だったとしても、最後には納得・安心いただける事業承継でありたい。」

20年以上M&Aコンサルティングに携わり、数多くの企業と事業承継に頭を悩まされる経営者との出会いの中で、年々その想いは強くなっていきました。

今回は実際に私が携わらせていただいた事業承継の中でも、印象深かった企業エピソードについてご紹介致します。

■建設企業T社の事業承継のケース

創業60年、創業者が3名という珍しい体制の企業でした。

この3名というのは戦友で、第二次世界大戦時に出会い、戦地より引き返したのちに共同で起業しようと一念発起され創業に至ったそうです。

「3名で5年ずつ代表を務めること。」

「株式等は全て3分割すること。」

この約束は厳守され、3人の経営者達が大切に大切に会社を育ててこられました。

そして、その先代達の想いは受け継がれ、それぞれの息子たち3名が、同様に交代制で代表を務め、株式等は均等分して受け取るといった原則のもと、会社を更に成長させていったそうです。

そのように歩んできたT社ですが、二代目経営者たちそれぞれが70歳を迎え、次世代への承継を真剣に考える時がやってきました。

自分たちがそうであったように、親族の中から後継者探しを始めましたが、残念なことに3名それぞれの息子たちは県外から戻ることができない、健康面の理由などから、後継者にすることは諦めざるを得ませんでした。そしてその他の親族や社員の中からも候補者が挙がることはありませんでした。

身内から後継者は出せないが、先代達の築いてきた礎を自分たちの代で絶やす訳にはいかない。

先代たちが戦友同士で築き上げた会社、それぞれの子孫達の手による更なる繁栄を願っていたに違いない、という想いから、会社を赤の他人へ譲渡することへの抵抗感はかなり強くあったそうです。

そのため、経営者3名で何度もぶつかり合いながら話し合いを重ねました。

残された時間はそう長くは無く、もうこれ以上先延ばしにすることは出来ない。安心して眠ることもできない。

そういったギリギリの時期まで検討された結果、M&Aによる事業承継を決断され、縁あって私達のもとへお話がやってきました。企業の経営状況等の詳細を拝見すると、長きに亘って堅実に、公私混同されることなく、誠実に経営されてこられたことが一目で分かるような、非常に素晴らしい内容でした。会社を大切に守ってこられたことが数字にまでも現れており、一層この案件に対して身が引き締まる思いでした。

正式にお申込みいただく際にもご決心は固く、躊躇されることはありませんでした。

そうしてお相手探しが始まりました。先代への想いもあってか、かなり慎重に検討され、そうした条件をクリアしたJ社への譲渡意思が固まった後の一連の流れは、非常にスムーズ且つスピーディーに進みました。

そして迎えた調印式の日。T社の現代表者のS氏よりご挨拶がありました。

「今朝、先代のお墓参りに行ってきました。」

そのようにお話になる声は涙に濡れていました。事業承継についてのご報告だけではなく、「申し訳ない」と先代に謝ってこられたとおっしゃるのです。想いを繋ぐことが出来なかった無念さと、苦渋の決断をしたことによる先代たちへの背徳感。その想いを背負いながらも、M&Aによる事業承継を選択したことで、優良企業との出会いと会社の将来に対する明るさを見出せたという大きな安心感がそこにはありました。経営者たちの重く大きな荷物を下した後のようなすっきりとした笑顔を見ることができ、私も大変感慨深く、事業承継のお手伝いをする意義について改めて考えさせられました。

いかがでしたか。

苦渋の決断の上、無理を強いた「継がせる不幸が心配される事業承継」ではなく、企業としての「明るい未来」を選択されたエピソードでした。経営者にとって後継者選びは、非常に頭を悩ませる、心身共に消耗する最大の懸念事項です。この経営者のご決断をサポートさせていただくこともまた、私たち共栄経営センターの使命であると感じております。

共栄経営センターでは、いち早く事業承継問題に取り組み、数多くのM&A仲介実施を積んでまいりました。
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