目標管理(MBO)の運用で悩んでいる企業は多いと思います。
目標管理(MBO)の考え方は、人事評価をしていくうえで優れた手法です。
セルフコントロールが前提になるので、上司と部下が課題について話し合ったうえで、目標についてお互いが共有する。そうすることで、相互に目標達成に向けの動機付けをしていく。
しかし、手法を導入しても運用が非常に難しいのが目標管理(MBO)です。
難しくしている原因は、いろいろとあります。
例えば、そもそもの目標が設定できない、設定した目標を評価できない、稚拙な目標しか出てこない等々・・・。
このように目標管理(MBO)に対する悩みが多々ある中、この記事では、「効果を上げるための目標管理(MBO)」というテーマに絞って解説します。
<目 次>
1.効果の上がる目標管理(MBO)の運用方法
1-1.結果目標とプロセス目標
1-2.仮説と検証の必要性
1-3.検証後の考え方
2.目標管理(MBO)の運用方法の具体例
2-1.目標とプロセスの相関関係
2-2.結果の活かし方
3.まとめ ~仮説と検証の重要性~
1.効果の上がる目標管理(MBO)の運用方法
KGIとKPIという言葉を聞いたことがあると思います。
KGIとは、Key Goal Indicatorの略で、ようは結果目標です。
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、ようは、結果目標を達成するためのプロセス目標です。
KGIとかKPIとか、横文字でかっこいい言葉で言っていますが、別にこんな考え方は昔からあったし(例えば方針管理とか)、言葉の定義を考えれば、ビジネスに携わっている人ならば、だれでもが知っていることです。
しかし、言葉の言い回しはなんでもいいとして、言葉の本質的な部分を理解しておくことは重要だと考えます。
そしてその本質的なところを理解することが、目標管理(MBO)を成功させるキーファクターになります。
たとえば、次のような結果目標とプロセス目標を設定したとします。
(わかりやすくするため営業職を例にとります)
(結果目標)売上5,000万円 (プロセス目標)Sランク企業5社 月間訪問数50社 重点販売商品売上200万円 |
ここで、重要な考え方は、「プロセス目標は『かもしれない』」ということです。『かもしれない』というのは仮説です。
ようは、結果目標を達成するための仮説にすぎないということです。
上記例の場合でいえば、
売上5,000万円(結果目標)を達成するために、とりあえずは、
仮説(1)Sランク企業を5社増加させよう
仮説(2)企業の訪問数を50社やってもよう
仮説(3)重点商品を200万円売ってみよう
ということです。
プロセス目標を設定するときは、まだ「これをやれば、結果はついてくるはずだ」という仮説にすぎません。行動してみないとわからないのです。
この、プロセス目標は仮説であるという考え方は、目標管理(MBO)を運用していく上で非常に重要なポイントになります。
使い古されているが、ずっと言われ続けているビジネス用語に、PDCAという言葉があります。思いませんか?なぜずっとこの言葉が言われ続けるのか?
私はこう思っています。
重要だと思っているけど、改善されないので言われ続けている。改善されていれば、この言葉自体が不要になるので、使われなくなるだけです。
目標管理(MBO)の問題もPDCAと似ている部分があります。ようは、PDCAのプロセスが回らないのです。
そして、目標管理(MBO)のPDCAの中で、一番重要なのは「C」です。検証です。この検証がされないために、目標管理(MBO)は形骸化していきます。
では、目標管理(MBO)の検証とは何か。
結果目標とプロセス目標の相関を検証するということです。
プロセス目標は、あくまでも仮説です。ということは、そのプロセスが結果に対してどの程度影響しているのかを検証してはじめて、意味をなします。
やってみた結果、「結果目標に影響しているプロセス目標」と「結果に影響していないプロセス目標」を検証するということです。
検証方法は難しくありません。
ようは、プロセス目標の結果が良ければ、結果目標の結果も良ければいいのです。
具体的なツールとしては相関という考え方で検証します。
相関の考え方は、下の図に集約されます。
縦軸を結果目標結果とし、横軸をプロセス目標結果にとります。
そして、各人をプロットしていきます。
結果として、
(1)正の相関がみられたときは、そのプロセス目標を上げることは、結果目標を上げることにつながる
(2)負の相関がみられたときは、そのプロセス目標を上げることは、結果目標を下げることにつながる
(3)無相関であるときは、そのプロセス目標と、結果目標は相関がない。
と検証します。
このようにして、プロセス目標の結果に対する影響度を検証することで、仮説の精度を上げていきます。
プロセスが結果に対して、効いているかどうかを検証した後には、2つの考え方があります。
結論から言うと、
(1)短期:結果目標に対して、効いているプロセス目標を残す
(2)中期:今は結果目標に対して効いていないが、戦略的に必要であるのであえて効いていないプロセス目標を残す
です。
普通に考えれば、結果に対して効いていないプロセス目標は、さっさと切り捨てればいいと考えます。
効いていないプロセス目標というのは、「負の相関」あるいは「無相関」であるプロセス目標です。
やってもやっても、結果に結びつかない行動はモティベーションを下げます。
もっといえば、もし、そのプロセス目標が上司からの指示で設定した場合はなおさらにです。
結果に対して全く意味のない行動を強制させられていることになります。これではモティベーションが維持できません。
経営・ビジネス的にも逆効果ですし、最終的には無能な上司呼ばわりされるだけです。
結果に効いているプロセス目標を残し、効かないプロセス目標は破棄する。こうすることで目標管理(MBO)の精度を上げていきます。
しかし、これは、あくまでも短期的な考え方です。
というのも、目標管理(MBO)の結果目標は、長くて1年スパンの目標として設定されます。よって、プロセス目標も短期志向になっていきます。
確かに、上記考え方でいけば、1年間の目標管理(MBO)の精度は上がります。
しかしビジネスは1年間の短期志向だけで運営しているのではありません。
次の戦略、次の商品、次のサービス、次の売り方など、中期的な取り組みも同時並行で進めていかなければなりません。
「短期的な結果には影響しないかもしれないが、将来的な結果のために、このプロセスはやっておかなければならない。」
というものはビジネス上重要な考え方だと思います。
よって、短期志向で捨てたプロセス目標も、中期的なフィルターをかけて、あえて残すものもあり得ます。
この、効いていないプロセス目標をあえて残すという決断は、経営層がしていくことになります。
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2.目標管理(MBO)の運用方法の具体例
上記図は、目標管理(MBO)の相関を分析したものです。
相関の詳細な説明は省略しますが、ようは考え方を記載します。
この会社の場合の、結果目標とプロセス目標(黒塗り以外)は以下のようになります。
<結果目標>
〇売上予算の達成
〇利益予算の達成
<プロセス目標>
〇休眠客売上高
〇訪問回数月平均
この目標管理(MBO)の結果を分析したものが上図になります。この分析はエクセルですぐにできますので、ぜひやってみてください。
さて、この分析からわかることは、いろいろありますが、目標と結果の検証という視点から絶対に見逃せないポイントが2つあります。
(1)プロセス目標結果たる「訪問回数月平均」と、結果目標たる「売上予算の達成」は強い正の相関がある。
(2)プロセス目標の「休眠客売上高」と、結果目標たる「利益予算の達成」は、強い負の相関がある。
ということです。
(1)は、訪問回数を上げると、売上が上がることを意味し、
(2)は、休眠客の売上が上がると、利益が下がることを意味します。
検証した結果をどう活かすかは、人間の判断です。
2-1で検証した結果は、あくまでも数字上の話です。そうなった原因や活かし方を考えるのは人間がしなければなりません。
それでは、原因を考えてみます。
(1)訪問回数を上げると、売上が上がる
顧客との接触頻度は、売上に影響を与える。接触頻度を上げることで、新派化度が上がり、信頼関係を築けるのではないか。
(2)休眠客の売上が上がると、利益が下がる
疎遠になった顧客を掘り起こすとは、ブランドスイッチを意味する。ということは、すでに入っている競合他社製品よりも安く入らざるを得ず、値引きせざるをえない。
今回はデータの結果を見てこのように推察しました。
今回は、といったのは、あくまでもデータからきた推察だからです。
このデータ検証と推察から、来期のプロセス目標として、
(1)訪問回数月平均は残し
(2)休眠売上高は削除する
ことに決定いたしました。
こうすることで目標管理(MBO)の精度を上げていきます。
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3.まとめ
目標管理(MBO)の運用で一番興味があるのは、どのような目標値を設定するか、にあると思います。
たしかに、目標値の設定は重要なポイントです。
しかし、それ以上に重要なのが、いかに検証するかです
目標値の設定はあくまでも仮説です。仮説なので、ダメな場合は大胆に切り捨てて次の目標値を立てた方がいい。効くプロセス目標を探すこと。これが目標管理(MBO)成功のポイントだと考えます。