こんな相談を受けることがあります。
「東京の人事コンサルにお願いして人事制度を作ったが、複雑で運用できない・・・。シンプルな人事制度にしたいので、相談に乗って欲しい・・・。」
そこで、出来上がった人事制度を見させてもらうと、分厚いマニュアル、とても中小企業では使えない高度な評価項目、潤沢な昇給・賞与予算を前提にした処遇制度・・・。
ましてや、仕組みが複雑なのでメンテナンスが自社でできない。何かを変えようとするといちいち依頼しなければならない。依頼すれば当然のようにコストがかかってしまう。
労力と時間を莫大にかけ、さらに費用もかけたにも関わらず、結局運用できなかった。
人事制度を作るときには、大概やる気があります。よって、人事コンサルに言われる通り、より深く、より高度に、より正確に、と人事制度が複雑になっていきます。
しかし、実際にできたものを運用しようとするとできない。実態とかけ離れた机上の空論のような人事制度では、評価ができないのです。
今回の人事制度のテーマは、「中小企業に合った、シンプルな人事制度を作る」です。
*等級制度・評価制度・処遇制度の詳細については、リンク先の記事を確認してください。
<目 次>
1.シンプルさと効果は反比例するのか
2.中小企業の等級制度について
2-1.なぜ等級数が増えていくのか
2-2.人事制度の運用は職群別人事で
3.中小企業の評価制度について
3-1.色々な評価項目に惑わされない
3-2.効果を上げる評価制度
4.中小企業の処遇制度について
4-1.柔軟性の高い賃金制度・賞与制度
5.まとめ ~簡潔な等級制度で運用できる人事制度を作る
1.シンプルさと効果は反比例するのか
人事制度構築のご支援をしていると、次のような心理に出くわすことがあります。
「人事制度を作ることで、様々な社内課題を解決したい」
↓
「人事制度に色々な社内課題を解決する仕組みを導入したい」
↓
「結果として、高度で複雑な方が効果は上がるのではないか」
確かに、こう考えられるのもわかります。
しかし、結果として、運用できなければ、「ない」のと同じ。
ベストを追い求めることは、もちろん重要ですが、ベストを追い求めすぎて運用できないようというワーストになってしまっては、元も子もありません。
人事制度にベストはないように思います。時代環境・社内体制の変化に柔軟に対応するようベターを追い求めるものだと考えます。
中小企業の人事制度は、まずはシンプルな人事制度で運用し、ブラッシュアップしていくことで、徐々に効果を上げていくものだと思います。
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2.中小企業の等級制度について
従業員50名の会社で、8等級、9等級も等級数があるのはなぜなんでしょうか。
等級の考え方は、色々ありますが、本質的には「役割」を定義するというのは誰も否定できないでしょう。
等級が「役割」を定義するして、50名以下の企業で、8つも9つも階層上の役割があるとは思えません。
あったとしても、「一般・主任・係長・課長・部長」程度の5つぐらいではないでしょうか。これでも多いぐらいです。
*例えば、一般と主任・係長の違いを、実際の現場から明確に言える人は少ない。
階層が増えるのは、処遇上の差を付けざるを得ないので、増やさざるを得ないという実情がありそうです。処遇上の差というのは、給与あるいは賞与などです。給与・賞与で差を付けなければいけないので、役割は全く変わらないけれども、階層を増やさざるを得ない。これでは本末転倒です。実際は役割の差がないのに、処遇上差をつけなければいけないので、等級数を増やしていく。これでは、等級は年々増えていくことになるでしょう。
役割定義の上で、処遇制度を設計する必要性があると考えます。
中小企業に最適な等級制度については、こちらの記事をご覧ください。
等級制度関連で、人事制度が運用できなくなる理由に、「直接部門・間接部門等も一律の運用にしている」を上げることができます。
一律の運用というのは、直接・間接とも一緒の等級→評価→処遇の流れに乗せるということです。ただこの場合、起こりえる現象として、間接部門の処遇が、直接部門より高くでるということが起こります。
というのは、直接部門は比較的数字で評価をすることができます。一方、間接部門は、なかなか数字で評価することが困難です。人事評価的にいえば、直接部門は定量評価、間接部門は定性評価になりがちになります。
そうなるとどうなるか。定量評価は厳密な数字での評価になりますので、評価が辛口になります。一方定性評価は、数字であらわれませんので、評価が甘口になります。
その評価傾向がある中、処遇を続けていけば、いずれ間接部門が直接部門より高い処遇を受けるということになります。
よって、等級→評価→処遇の流れは、ある一定の職種の群れ(職群)で流していくべきだと考えます。
職群別評価については、こちらの記事をご覧ください。
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3.中小企業の評価制度について
人事評価ほど、底がないものはないと思います。深掘りをしていけばきりのない世界です。だからといって、効果を求めなければ、人事評価を作る意味はありません。
効果には色々ありますが、何を求めるのかによって評価制度の作り方が変わってきます。
「公平性を求めるのか」「できる人とできない人の差を明確にしたいのか」「動機付けか」「固定費の削減か」「戦える組織にしたいのか」とうとう。
求める効果は、それぞれ合っていいと思いますが、その場合、世の中にある様々な人事評価に対する考え方に惑わされないようにしてほしいと思います。
人事評価の考え方はたくさんあります。
能力評価・成果評価・結果評価・行動評価・情意評価・目標管理・意欲態度評価・業務評価・プロセス評価・・・・。
様々なコンサルタントや、企業が様々な評価項目のコンセプトを作っています。書籍もたくさん出ています。しかし、よくあるのが、このような様々ある考え方に翻弄されて、自社に合った評価を見失ってしまうことです。あるいは、何もかも評価制度にいれてしまい、複雑で運用できない評価制度をつくってしまうことです。
人事評価制度を作る場合、本質的な目的を明確にしてから取り組むことがポイントです。
中小企業の人事評価制度の作り方は、こちらの記事をご覧ください。
人事評価を初めて導入する企業と、人事評価は定着したが、もっと効果の上がる評価項目にしたい企業とでは、評価項目のとらえ方が違います。
人事評価のスタートアップ企業は、あまり複雑で高度な評価制度を作らない方がいい。
まずは、誰でもができるような評価項目(例えば能力評価)を選択して、まずは「評価をする」「評価をされる」ことになれることが重要だと思います。それを、半期ごとに繰り返し、慣れてきた段階で、より効果性の高い評価項目を導入していくのが良いと思います。
より効果性の高い人事評価は、ようは業績への貢献度合いをみていくということです。それぞれの評価項目が業績に効いているかどうかを検証することが重要だと思います。
KGIとKPIという言葉がありますが、KGIに効くKPIを評価項目として採用することで、評価の効果性を高めていきます。
効果の上がる目標管理(MBO)の運用方法は、こちらの記事をご覧ください。
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4.中小企業の処遇制度について
人事評価制度は、ブラッシュアップをかけていくことができますが、処遇制度はそうはいきません。賃金制度や賞与制度は、一旦構築してしまうと、多少の変更はいいと思いますが、根本的な変化を頻繁に実施することは、あまり好ましくありません。
ということは、処遇制度自体を慎重に構築するとともに、制度自体を柔軟に運用できる制度にしておくことがポイントです。
一方、硬直化した処遇制度は、いつか運用できなくなります。
硬直化した人事制度の顕著な例は、絶対額のピッチで作られた賃金表のみで処遇制度を運用している場合です。具体的な賃金表でいえば、年齢給や職能給のことをいいます。
例えば職能給のピッチは絶対額となっています。昇格した場合は、20,000円アップ。評価がSの場合は、4号棒上がって3,000円アップという具合です。
当たり前のことですが、この20,000円とか3,000円という金額は、業績と一切関係がありません。業績が上がろうが、下がろうが、20,000円は20,000円だし、3,000円は3,000円です。業績が右肩上がらりで、昇給・賞与予算が潤沢に取れる場合には機能しますが、業績が横ばい、および下降した場合には、一気に運用できなくなります。
よって、中小企業の処遇制度は、絶対額による処遇と業績と連動した率による処遇を組み合わせることが重要です。
中小企業の最適な賃金制度は、こちらの記事をご覧ください。
経営とバランスされた賞与制度は、こちらの記事をご覧ください。
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5.まとめ ~簡潔な等級制度で運用できる人事制度を作る
中小企業の人事制度はシンプルが一番。というコンセプトをもとに記事を書いてみました。まずは運用できる人事制度を作り、徐々にブラッシュアップをかけていく。これが中小企業の運用できる人事制度のポイントだと思います。
中小企業の人事コンサルティングを実施しているノウハウをもとに、本稿を書きました。
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本記事が皆様の人事制度構築に参考になれば幸いです。