相対評価と絶対評価について

人事評価制度を構築あるいはメンテナンスしたいという動機には、色々あると思います。

□できる人・できない人がわるようにし、公平性を担保したい
□モチベーションを高めたい
□人材育成につなげたい
□処遇(賃金・賞与)を公平にしたい
□鉛筆ナメナメから脱皮したい・・・
などなどです。

しかし、どのような動機であれ、人事評価を実施していくときに、まず決めなければならないことがあります。

評価制度を
■相対評価で実施するか
■絶対評価で実施するか
です。

評価制度を考える上で、「あくまでも評価の集計方法の理屈で、枝葉末節だ。」と思われるかもしれませんが、実は非常に重要なことです。

どんなに優れた評価項目を採用しても、相対評価を採用するか、絶対評価を採用するかで、結果が大きくことなるからです。

どのような人事関係の本を読んでみても、あるいは、色々な人の意見を聞いても、ほとんどの人は「相対評価と絶対評価を比較すれば、絶対評価が優れている」と言うと思います。

しかし、世の中の人事制度を見た場合、相対評価も多く採用されています。

なぜなのでしょうか?

本稿では、絶対評価が優れているということを前提にしながら、なぜ相対評価にならざるを得ないのか、あるいは、絶対評価を採用するにはどのような条件が必要なのかをお話したいと思います。

<目 次>
1.絶対評価と相対評価はどちらが優れているのか
2.相対評価について
2-1.相対評価とは
3.絶対評価について
4.絶対評価に耐えられる処遇制度を構築する
5.まとめ


 

1.絶対評価と相対評価はどちらが優れているのか

冒頭でも言いましたが、「相対評価と絶対評価を比較した場合、どちらが優れているのか」といわれれば、多くの人が「絶対評価」だと言われると思います。

詳細はあとで述べますが、相対評価は層の中で順位づけをするのに対して、絶対評価はその人個人を評価するからです。

相対評価のような順位づけは、学校に合格するとかの可否を判断するには優れていますが、不合格(解雇)できない会社では疑問が残ります。

一方絶対評価は、雇用していくことを前提として、できない人でも育成を前提としています。

解雇を容易にできない日本の会社においては、絶対評価が向いていると思います。

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2.相対評価について

2-1:相対評価とは

相対評価は順位を、ある一定の層内で、順位付けをすることを言います。

例えば、100名の従業員がいる会社を考えてみます。
100名を1つの層とみて、この中で順位をつけていきます。
上位5%以上を「S」
上位5%未満~15以上を「A」
というように順位付けしていきます。

ということは、もし評価が「S・A・B・C・D」まであったとすると、必ずS及びDの人が出てくるということです。

これはこれで、正当性があるように思いますが、層と点数の分布の問題があります

層の問題というのは、相対評価では、層の質は問われないということです。
層のレベルが低くても、必ず「S」の人はでるし、層のレベルが高くても必ず「D」の人がでます。

また、点数の分布の問題ですが、
点数の幅が「50点から60点」の間でも必ず「S及びD」がでるし、点数の幅が「10点から90点」でも「S及びD」が出ます。
点数の重みが、変わってくるのです。

相対評価の課題は、層の質と点数の重みが違うのにも関わらず、必ず「S・A・B・C・D」が出るということです。

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3.絶対評価について

相対評価と違い、絶対評価はその人個人の点数が、その人の評価になります。つまり順位をつけないのです。

その場合、相対評価にあるような課題は存在しません。層のレベルの問題も、点数の重みの問題もありません。

しかし、絶対評価ならではの課題もあります。

分布の問題です。

たとえば、従業員が100名の会社があったとして、評価を絶対評価でしたとします。
極端な場合、S評価が80名でA評価が20名ということも理論上はありえます。

この場合、もしこのまま処遇(昇給・賞与)に結びつけると、昇給額・賞与額が大変なことになることもあり得ます。
昇給予算・賞与予算を超過してしまうのです。

絶対評価の課題は、評価分布が偏重した場合、処遇制度が耐えられないということです。

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4.絶対評価に耐えられる処遇制度を構築する

相対評価及び絶対評価の双方に課題があります。ですが、評価制度単体で見た場合、絶対表評価の方が優れているのは事実です。

しかし、事実として相対評価にならざるを得ないのは、「絶対評価に耐えられない処遇制度」であるからです。

相対評価(評価分布を正規分布にしなければ)でなければ、処遇制度が破綻してしますので、絶対評価がいいことはわかっているが、相対評価にせざる負えないということです。

これでは、本末転倒です。

結論を申し上げれば、
「絶対評価に耐えられる処遇制度」を構築すべきであると考えます。

具体的にいえば、昇給予算・賞与予算を「評価と等級」に応じて「率分配」する処遇制度を構築します。

率分配にすれば、評価分布の状況は関係なくなります。
例えば、Sが多くなれば、Sの単価が下がるだけです。
Dが多くなれば、Dの単価が上がるだけになります。

どのような評価分布であったとしても、処遇制度は耐えられます。

率分配の賃金制度はこちらの記事に書いていますのでご覧ください。

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率分配の賞与制度はこちらの記事に書いていますのでご覧ください。

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5.まとめ

相対評価と絶対評価を比べれば、絶対評価が優れています。しかし、絶対評価をうまく運営するには、絶対評価に耐えられる処遇制度を構築する必要性があります。

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本記事が皆様の人事制度構築に参考になれば幸いです。

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